次の越後姫シーズンへ向けて
今年のいちご苗、いつもと違う?
冷蔵処理で何が起きるのか、
全国の花芽分化促進法も調べてみた
今年は、いつもの
「白いもやしみたいな苗」が少ない。
果たして、これは良いことなのか?
この記事の要点
まずは4コマでどうぞ(笑)
苗のことで頭がいっぱいの私と、
スーパーのことで頭がいっぱいのことはです(笑)

「え〜、やだ!」からの「やっぱり行く!」(笑)
「ねえ、ちょっと出かける前に寄るところあるけど、寄ってからでもいい?」
と子どもに聞きました。
すると、
「え〜、やだ!」
と即答(笑)
「じゃあ、ついてこなくてもいいよ!」
と伝えて、嫁さんに、
「帰りにスーパー寄って、買い出ししてから帰るね!」
と言いました。
すると、それを聞いていた下の子のことはが、
「やっぱり行く!
ついてく!」
……。
さっきまで、
「やだ!」
って言ってたよね?(笑)
「別についてこなくてもいいよ!」
と言っても、
「行く!」
とのことなので、一緒に行くことになりました。
どうやら目的は、
その後に寄るスーパーみたいです(笑)
その前に向かったのは、冷蔵処理中のいちご苗
スーパーへ行く前に、私には確認しておきたいものがあります。
それが、冷蔵処理しているいちごの苗です。
冷蔵庫へ行って、温度を確認。
そして苗の状態も見ていきます。
今年の今の様子は、こんな感じです。
今年の苗を見ていて、例年と少し違うところがあります。
それが、
白いもやしみたいな状態に
あまりなっていない。
ということです。
冷蔵庫の温度を見ながら、
「今年、少し低いかな?」
と思っていたので、それが関係しているのかもしれません。
ただ、今の段階では、それが理由だとは言い切れません。
そして何より、見た目だけで、
「今年は良い!」
「今年はダメ!」
とも判断できません。
そもそも、なぜいちごの苗を冷蔵するの?
いちごを育てていない方からすると、
「苗を冷蔵庫に入れて、何してるの?」
って感じですよね(笑)
いちごは、ずっと葉っぱを作り続けていれば実がなるわけではありません。
まず、苗の成長点の中で、
「これから花を作ろう」
という変化が起こります。
これが、花芽分化です。
一般的な一季成り性のいちごでは、気温が下がり、日が短くなっていくことで、栄養成長から花を作る方向へ切り替わっていきます。
つまり、自然の中では、夏が終わって秋へ向かうことが一つの合図になります。
でも、自然に任せていると、暑い年には花芽分化が遅れることがあります。
そこで、苗に人工的に低温などの条件を与えて、
「そろそろ秋ですよ」
と感じてもらう。
それが、冷蔵処理をする大きな目的です。
冷蔵処理すると、いちご苗はどうなる?
冷蔵処理で狙っている一番大きな変化は、
花芽分化を自然条件より早く進めること。
です。
花芽分化を早く進めることができれば、苗を早く本圃へ定植できます。
その後の出蕾。
開花。
そして収穫。
それぞれを前へ進めることにつながります。
冷蔵処理
↓
花芽分化
↓
定植
↓
出蕾・開花
↓
収穫
つまり冷蔵処理そのものが目的ではありません。
欲しい時期に花を咲かせ、欲しい時期に収穫へつなげるための処理なんです。
じゃあ「白いもやしみたいな苗」は何?
冷蔵庫の中は暗いです。
暗い環境の中で新しい葉が動くと、普通に太陽の光を受けながら育った葉とは違った姿になることがあります。
新しい葉が黄色っぽくなったり。
葉柄が伸びたり。
白っぽく、細長く見えたり。
低温暗黒処理では、こうした新葉の黄化や徒長が起こることが知られています。
私が、
「白いもやしみたい」
と言っているのも、こうした変化です。
でも、
白く伸びたかどうかと、
花芽分化が成功したかどうかは別の話。
なんですよね。
今年は例年より白く伸びた部分が少ない。
「冷蔵庫の温度が少し低かったからかな?」
とも思います。
でも、温度だけではなく、処理を始めた時の苗の状態、処理期間、苗の充実度、肥料の状態など、いろいろな条件が関係します。
なので、今はまだ答えを出さない。
これが一番正しいと思っています。
一番大事なのは「花芽分化しているか」
結局、一番確認したいのはここです。
花芽分化が
どこまで進んでいるのか。
苗の見た目だけで判断するのではなく、成長点を確認して、花芽分化のステージを見る。
そこで初めて、
「今年の冷蔵処理はうまくいった」
「もう少し処理が必要」
という判断ができます。
ここが、いちご栽培の面白いところでもあり、難しいところでもあります。
今日やったことの答えが、今日分かるわけではありません。
少し先になって、初めて答えが出てきます。
全国のいちご農家は、みんな同じ冷蔵処理をしている?
ここも気になったので、改めて調べてみました。
すると、やっぱり面白い。
全国のいちご農家が、同じ温度・同じ日数で冷蔵処理をしているわけではありません。
同じいちごでも、品種が違えば花芽分化しやすい温度や時期が違います。
さらに、北海道と沖縄では夏の気温も全然違います。
そのため、それぞれの地域や品種に合わせて、いろいろな花芽分化促進方法が使われています。
方法① 苗をずっと冷蔵庫へ入れる「低温暗黒処理」
まず、分かりやすいのが低温暗黒処理です。
「株冷」と呼ばれることもあります。
苗を冷蔵庫へ入れ、低温・暗黒の環境に一定期間置きます。
例えば、実際の研究・普及例を見ると、
新潟県「越後姫」
越冬苗を使った早出し技術では、12℃の暗黒低温処理を25日間行う方法が研究されています。
静岡県
15〜20日ほど冷蔵庫へ入れ、前半を10℃程度、後半1週間を15℃程度にする低温暗黒処理が紹介されています。
長崎県「ゆめのか」
15℃の冷蔵庫で暗黒低温処理をすると、2週間程度で定植の目安となる花芽分化まで進んだ試験例があります。
同じ「低温暗黒処理」という名前でも、温度や日数は違います。
ここからも、
「○℃で○日やれば、
どのいちごでも同じ」
ではないことが分かります。
方法② 冷蔵と外を行ったり来たり「間欠冷蔵処理」
次が、間欠冷蔵処理です。
これは苗をずっと冷蔵庫へ入れておくのではありません。
低温と自然条件を交互に繰り返します。
新潟県では「越後姫」で、
15℃で3日間冷蔵
↓
3日間、自然条件
↓
これを3サイクル
という方法が研究されています。
8月31日または9月1日頃から処理を始めることで、慣行育苗に比べて頂花房の開花が1〜2週間、収穫が約1か月早まったという結果が出ています。
さらに、冷蔵庫から出した苗と、これから入れる苗を交互に回すことができるので、冷蔵庫の容量を効率よく使えるメリットもあります。
越後姫のように、処理の安定性を高める方法として研究されてきた技術です。
方法③ 夜だけ冷やして日を短くする「夜冷短日処理」
冷蔵庫へずっと入れる以外にも方法があります。
それが、夜冷短日処理です。
いちごが花芽を作る時に重要になる、
低温。
そして短い日長。
その二つを人工的に作ります。
例えば沖縄で行われた「さちのか」の試験では、
日長8時間
夜温15℃
という短日夜冷処理を20日以上行うことで、定植時に安定して花芽分化させることができました。
面白いのは、同じ沖縄の試験で、10℃の低温暗黒処理では十分な効果が得られず、逆に花芽分化が遅れたケースもあったことです。
つまり、
「もっと冷やせば、もっと花芽分化する」
わけではありません。
品種。
苗の状態。
地域の気候。
処理を行う時期。
こうした条件に合った温度管理が必要なんですね。
方法④ 冷蔵庫ではなく「山へ持っていく」
さらに、いちご栽培には昔から面白い方法があります。
高冷地育苗。
いわゆる「山上げ」です。
栃木県などで行われてきた方法で、暑い平地ではなく、標高の高い冷涼な地域へ苗を運んで育てます。
山は、平地より気温が低い。
その自然の涼しさを利用して、いちごに低温を感じさせ、花芽分化を促します。
冷蔵庫で秋を作るのではなく、
苗を涼しい場所へ連れていく。
という感じですね。
現在は夜冷育苗やポット育苗など別の技術も普及していますが、栃木県では今も高冷地育苗が行われている地域があります。
昔の人は、大きな冷蔵庫がなくても、
「山の涼しさを使えばいい」
と考えたわけです。
これはこれですごいですよね。
方法⑤ 最近は「3日だけ冷蔵」という研究も
さらに最近では、もっと短い処理の研究も進んでいます。
農研機構が2024年度の研究成果として公表した技術では、トレイ苗を、
13〜15℃・暗黒条件で
3日間だけ冷蔵
することで、出蕾や開花を早められることが確認されています。
試験されたのは、
「さぬき姫」
「ゆめのか」
「さちのか」
などです。
ポイントは、いつでも3日冷蔵すればいいわけではないこと。
効果が高かったのは、それぞれの品種が自然条件で花芽分化する時期の約1週間前でした。
つまり、処理の日数を増やすだけでなく、
「いつ冷やすのか」
も、ものすごく重要だということですね。
全国を調べると、「正解は一つじゃない」
こうして全国の方法を比べると、よく分かります。
苗を一定期間、低温・暗黒の冷蔵庫へ入れる。
数日冷蔵して、数日自然条件へ戻すことを繰り返す。
夜を冷やし、日長を短くして花芽分化を誘導する。
苗そのものを標高の高い涼しい場所へ運ぶ。
自然の花芽分化直前に、数日だけ低温を与える。
全部、目的は似ています。
花芽分化を安定させたり、早めたりすること。
でも、そこへ向かう方法は同じではありません。
これが、いちご栽培の面白いところでもあります。
冷蔵処理は「低ければ低いほどいい」わけでもない
全国の試験を見ていて、もう一つ大事だと思ったことがあります。
冷蔵処理という名前なので、
「温度を下げれば下げるほど、花芽分化が進むんじゃない?」
と思いそうになります。
でも、そう単純ではありません。
温度が低すぎても。
処理期間が長すぎても。
処理を始める時期が早すぎても。
品種によっては思った効果が出ないことがあります。
さらに、せっかく花芽分化を誘導しても、処理後に苗が強い高温へ長くさらされると、その後の花芽の発達が遅れる可能性もあります。
大事なのは、
「一番冷やすこと」ではなく、
「その苗に合った条件を作ること」。
なんですよね。
だから、毎年少しずつ試して答えを出す
いちご栽培をしていると、こういうことがたくさんあります。
昨年の結果を見る。
「ここを変えた方がいいかな?」
と思う。
今年、少し変えてみる。
そして苗を見る。
でも、その場ではまだ答えが分からない。
しばらく経って。
花芽分化を確認して。
定植して。
花が咲いて。
収穫が始まって。
そこで、ようやく、
「あの時の管理、良かったな」
という答えが出ることがあります。
だから、毎年同じことをただ繰り返しているわけではありません。
前年の結果を見ながら、少し変える。
そして、また結果を見る。
その繰り返しです。
今年の苗は、果たしてどうなのか
今年の苗は、例年より白く伸びた部分が少ない。
冷蔵庫の温度も、
「少し低いかな?」
と感じています。
でも今の段階では、
良かったとも。
悪かったとも。
まだ言えません。
大事なのは、花芽分化がどこまで進んでいるか。
そして、その後どう花が上がってくるか。
さらに、最終的にいつ収穫が始まるのか。
今年の冷蔵処理の答えは、
もう少し先。
なので今は、苗の状態を見ながら、答えが出るのを待ちたいと思います。
苗のチェックが終わったら、今度はスーパーへ(笑)
ということで、冷蔵処理中の苗のチェックは終了。
温度を確認して。
苗を見て。
「今年はどうなるかな?」
なんて考えながら、車へ戻ります。
そして今度は、ことはが楽しみにしていたスーパーへ(笑)
車の中には、私とことは。
でも、頭の中は、
パパ
今年の花芽分化はどうかな?
温度はこれで良かったかな?
ことは
スーパーで
何買おうかな?(笑)
同じ車に乗っていますが、考えていることは全く違います(笑)
まあ、ことはからしたら、花芽分化よりスーパーの方が大事ですよね(笑)
PS:
全国の冷蔵処理を調べてみると、本当にやり方がいろいろありました。
ずっと冷蔵する。
出したり入れたりする。
夜だけ冷やす。
山へ持っていく。
最近では3日だけ冷蔵する方法まであります。
同じ「いちごの花芽分化」というゴールでも、そこへ向かう方法は一つではないんですね。
だからこそ、他の地域のやり方を知るのも面白い。
その中から、越後姫や苺の花ことばの環境に合うものを考えて、試して、結果を見る。
今年の冷蔵処理がどうだったのか。
花芽分化を確認したら、また結果を書きたいと思います。
ちなみに、苗のチェックが終わったあとのことはは、
予定通りスーパーを楽しんでいました(笑)