11月上旬の収穫を目指して
いちごの苗を冷蔵庫へ?
越後姫の収穫を早める
苗の冷蔵処理
今年しっかり育ててきた苗を、
葉や根を育てる段階から、花を作る準備へ。
来シーズンの越後姫は、もう始まっています。
この記事の要点
「じゃあ、先に行きます!」
「じゃあ、先に行きます!」
クルーにそう言われました。
「これを積んだら、あとから行くね」
そう返事をして、私は引き続き車へ苗を積み込んでいきます。
何をしているのかというと、来シーズンに使う越後姫の苗を、冷蔵処理を行う施設へ運ぶ準備です。
苗が倒れないように並べ、葉が傷まないように気を付けながら、一株ずつ車へ積んでいきます。
今はまだ緑色の葉がついた小さな苗ですが、この一株一株が来シーズンの収穫につながっていきます。
いちごの苗を冷蔵庫へ入れるの?
「いちごの苗を冷蔵庫へ入れるの?」
そう思いますよね。
そうなんです。
もちろん、家庭で使っている冷蔵庫へ入れるわけではありません(笑)
苗を収容できる大きな冷蔵施設へ運び、一定期間、涼しくて暗い環境に置きます。
苗を保存するためだけではなく、
苗の成長を次の段階へ進めるための処理です。
苗に「もう秋が来たよ」と感じてもらう
では、なぜ元気に育っている苗を、わざわざ冷やすのでしょうか。
簡単に言うと、苗に、
「もう秋が来たよ」
と、ひと足早く感じてもらうためです。
いちごは、暑い夏の間に葉や根を育てます。
そして、気温が下がり、日が短くなってくると、苗の中で花を咲かせる準備が始まります。
この花を作る準備のことを、「花芽分化」といいます。
普通に育てていれば、夏が終わり、自然に気温が下がるのを待つことになります。
そこで苗を一定期間冷やし、自然の秋を待つよりも早く、花を作る準備へ進めていきます。
これが、今回行ういちご苗の冷蔵処理です。
苗の中にある「季節の時計」を進める
冷蔵処理と聞くと、苗の成長を止めて保存するように感じるかもしれません。
しかし、今回の一番の目的は、苗の成長を次の段階へ進めることです。
冷蔵処理の前
葉や根を育て、
株を充実させる段階
冷蔵処理の後
花を作り、
収穫へ向かう準備の段階
苗の中にある季節の時計を、少し早く進めるようなイメージです。
この冷蔵処理を行った苗は、通常の促成栽培で使う苗よりも、早い時期から収穫できる可能性があります。
今回の計画では、11月上旬ごろからの越後姫収穫を目指しています。
冷蔵庫へ入れれば、すべてうまくいくわけではない
ただし、苗を冷蔵施設へ入れれば、それだけで早く収穫できるわけではありません。
冷蔵処理へ入るまでに、苗がしっかり育っていることが大切です。
葉だけが大きく見えていても、株元や根が十分に育っていなければ、その後の生育が思うように進まないことがあります。
冷蔵処理へ進む前には、苗を一株ずつ確認します。
良い状態で次の工程へ進められるように、最後まで丁寧に確認していきます。
こちらが、冷蔵処理へ入れる越後姫の苗です
今回、冷蔵処理を行う越後姫の苗がこちらです。

今年の苗を見ていると、全体的にかなり良い状態に仕上がっています。
昨年よりも、水や肥料の与え方、苗の置き場所、葉や根の状態を細かく確認しながら管理を進めてきました。
その積み重ねが、少しずつ苗の状態に表れてきています。
今年のクラウンは「激太」です(笑)
特に見ていただきたいのが、株元にある「クラウン」と呼ばれる部分です。

クラウンは、いちごの葉や花が出てくる株の中心部分です。
ここが太く、しっかりと育っている苗は、その後の生育にも期待が持てます。
今年のクラウンは、言い方が正しいのか分かりませんが……。
激太です(笑)
苗を持ってみても、株元ががっしりとしているのが分かります。
冷蔵処理へ入る前の苗として、良い状態へ育ってくれました。
見えない土の中でも、根が育っています
もう一つ大切なのが、根の状態です。

ポットの中まで白い根がしっかりと張り、培土を包み込むように伸びています。
葉だけが大きく見える苗ではなく、見えない土の中でも、きちんと育っている。
クラウンが太く、根もしっかり張っている。
地上部だけでなく、
見えない部分まで育っていることが、
良い苗づくりには大切です。
冷蔵処理へ入れる前の苗としては、かなり良い状態に仕上がっています。
良い苗は、良いスタートにつながる
苗の状態が良いからといって、最後まで何もしなくてもうまくいくわけではありません。
これからも、いくつもの工程が残っています。
一つひとつの工程を切り離すことはできません。
苗づくりから冷蔵処理、定植、その後の管理まで、すべてをつないでいく必要があります。
それでも、この時点でクラウンと根がしっかり育った苗を用意できたことは、11月上旬の収穫へ向けて、良いスタートを切れていると思います。
この小さな苗が、真っ赤な越後姫になる
今はまだ、緑色の葉がついた小さな苗です。
でも、この一株一株が冷蔵処理を終え、ハウスへ植えられます。
そこから白い花を咲かせます。
花の中心が少しずつ膨らみ、緑色の小さな実になります。
その実が少しずつ大きくなり、最後には真っ赤な越後姫になります。
苗を運ぶ今日の作業も、
来シーズン最初の一粒へ
つながっています。
そう考えると、苗を車へ積み込む作業も、来シーズンへ向けた大切な工程なんですよね。
最後にもう一度、苗を確認して出発
すべての苗を車へ積み終えたら、最後にもう一度確認します。
倒れている苗はないか。
葉が車やほかの苗に挟まっていないか。
運んでいる途中に崩れないように並んでいるか。
一株ずつ見ながら、問題がないことを確認しました。
そして、先に出発したクルーを追いかけるように、私も冷蔵施設へ向かいます。
昨年より早い、11月上旬ごろの収穫を目指して。
今年しっかり育ててきた苗を、次の工程となる冷蔵処理へ送り出しました。
来シーズンの越後姫は、もう始まっています
お客様に越後姫をお届けするのは、まだ数か月先です。
でも、来シーズンの収穫へ向けた仕事は、すでに始まっています。
苗を育てる。
状態を確認する。
冷蔵処理を行う。
ハウスを整える。
一つひとつの作業を積み重ねながら、最初の収穫へ向かっていきます。
今年の苗が、どんな越後姫を実らせてくれるのか。今から楽しみです。
いちご苗の冷蔵処理について、よくある質問
なぜ、いちごの苗を冷蔵するのですか?
苗にひと足早く秋のような環境を感じてもらい、花を作る準備である花芽分化へ進めることが目的です。
冷蔵処理をすれば、必ず早く収穫できますか?
冷蔵処理だけで決まるわけではありません。処理前の苗の状態や、処理後の確認、定植後の水や温度の管理など、すべての工程をつなげる必要があります。
クラウンとは何ですか?
いちごの株元にある、葉や花が出てくる中心部分です。今回冷蔵処理へ入れる苗は、このクラウンが太く、しっかり育っています。
良い苗は、葉を見れば分かりますか?
葉だけではなく、クラウンの太さや根の張り方も確認します。地上部と土の中の両方が育っていることが大切です。
PS
今年の苗は、クラウンも根もかなり良い状態です。
とはいえ、収穫まではまだ長い道のりがあります。
ここで安心しすぎず、冷蔵処理から定植、その後の管理まで、一つずつ丁寧につないでいきたいと思います。
まずは11月上旬、最初の越後姫を無事に収穫できるように進めていきます。