いちかと、上越のぶどう園へ
ぶどうより先に「棚」を見てしまう(笑)
上越・山本ぶどう園で知った仕立て方と、
量と質のバランス
美味しそうなぶどうを見に行ったはずなのに、
農家の私は、その奥にある「作り方」が
気になってしまいました(笑)
この記事の要点
まずは4コマでどうぞ(笑)
ぶどうを買いに行ったのに、
私が最初に見たのは……棚でした(笑)

「パパっ!今日どこに行くの?」
「パパっ!
今日どこに行くの?」
と聞かれました。
「もうすぐ9月になるし、その前に行きたいところあるんだよね!」
「パパと一緒に行く人!?」
と聞いてみます。
すると、下の子のことはは、
「こっちゃんは
いかな〜い。」
と即答(笑)
一方、上の子のいちかは、
「僕はついて行く!」
とのこと。
ということで、高橋家、二手に分かれることになりました(笑)
向かったのは、上越にある山本ぶどう園
私といちかが向かったのは、上越市浦川原区にある山本ぶどう園です。
実は上越にも、昔からぶどうの産地があります。
私は毎年この時期になると、ぶどうを買いに行っています。
いつも行っているのは、三和区の北代というところにあるぶどう園。
でも今年は、
「たまには違うところへ行ってみよう!」
ということで、山本ぶどう園へ行ってみることにしました。
ちなみに、
「北代ぶどう園」
「山本ぶどう園」
という名前の大きな農園が、それぞれ1軒ずつあるわけではありません。
地域の中に複数のぶどう農家さんが集まり、それぞれぶどうを作って直売しています。
山本ぶどう園は、山本山という標高150mほどの小高い丘に広がるぶどう産地。
現在は約20戸の農家さんが、全体で約7ヘクタールのぶどう畑を営んでいるそうです。
デラウェア。
キャンベル。
巨峰。
シャインマスカット。
など、いろいろなぶどうが作られています。
初めてなので「どこに入ればいいんだ?」(笑)
ただ、私は山本ぶどう園へ行くのは初めてです。
道を進んでいくと、ぶどう農家さんが何軒もあります。
当然ですが、
「どこのぶどうが一番美味しいのか」
なんて私には分かりません(笑)
なので、とりあえず車でどんどん奥へ。
「もうちょっと行ってみる?」
「まだあるな。」
なんて、いちかと話しながら進みます。
そして、かなり奥の方にあるぶどう園へ入ってみることにしました。
でも、実はそこへ入ったのには、一つ理由があります。
ぶどうそのものを見て決めたわけではありません。
私が見たのは、
ぶどうの棚。
です(笑)
「あっ、この作り方してるんだ。」
その時に見えたのが、こちら。
写真の手前ではなく、奥の方に見えているぶどう。
一般的に私が目にする大きく広がったぶどう棚とは、枝の配置や樹の作り方が少し違って見えました。
私も農家なので、ぶどう専門ではないものの、仕立て方について少しだけ知っています。
なので、
「あっ!
この作り方してるんだ。」
と気になりました。
ただ、ここは正確に書いておきます。
この写真だけから、その農家さんが「一文字型」「H型」など、どの整枝法を採用しているのかまでは断定できません。
なので、特定の農家さんの栽培方法を決めつけるのではなく、ここからは一般的なぶどうの仕立て方について紹介します。
そもそも「ぶどう棚」って、何が違うの?
ぶどうを見ていると、全部同じ棚に見えるかもしれません。
でも、農家目線で見ると、
棚そのものの高さや構造。
幹をどこまで伸ばすか。
主枝を何本作るか。
枝をどの方向へ伸ばすか。
毎年どこまで枝を切るか。
いろいろな違いがあります。
ぶどうの樹をどんな形に作っていくかを、
「仕立て」や「整枝」
といいます。
日本の生食用ぶどうでは、頭の上に枝を広げる棚仕立てがよく使われています。
その棚仕立ての中でも、枝の作り方によっていくつか代表的な形があります。
代表的な「X字型・長梢せん定」
昔から多く使われてきた代表的な方法の一つが、X字型の長梢せん定です。
上から見ると、太い主枝を何方向かへ伸ばし、広い棚面を1本の樹で覆うように育てていきます。
冬のせん定では、翌年ぶどうを実らせるための枝を比較的長く残します。
そのため、1本のぶどうの樹が担当する面積がかなり大きくなります。
メリットとしては、樹勢を見ながら残す枝を選べること。
一方で、
「どの枝を残すのか」
「どこで切るのか」
という判断には経験が必要です。
少ない樹数で、
大きな棚面を使う栽培。
というイメージに近いです。
「一文字型・短梢せん定」
もう一つが、一文字型の短梢せん定です。
名前の通り、主枝を左右へ一直線に伸ばしていくような形です。
そして冬のせん定では、毎年伸びた枝を短く切り戻します。
枝の配置が規則的になるので、
せん定。
芽かき。
誘引。
房づくり。
摘粒。
袋掛け。
といった管理作業を順番に進めやすい特徴があります。
また、大きな1本の樹で広い面積を覆う方式に比べて、栽植本数が多くなる場合があります。
例えば、ある県の栽培指針の例では、10アール当たり、
一文字型・短梢 約25本
H型・短梢 約12〜14本
X字型・長梢 約7本
という目安が示されています。
もちろん、これは一つの栽培指針の例です。
土地の肥沃度や品種、樹勢、目標とする樹形によって変わります。
そして「H型・短梢せん定」
一文字型を発展させたような形に、H型があります。
上から見た時に、主枝がHの形に見えるように作ります。
H型の特徴として、樹勢を比較的均一にしやすいことがあります。
栽培資料によっては、
糖度。
果粒の肥大。
などのばらつきが、一文字型より少なくなりやすいとされています。
また短梢せん定なので、枝の配置が規則的で、せん定や新梢管理も比較的分かりやすい。
樹を大きく自由に広げるのではなく、
ある程度決めた形の中で
樹勢や枝を管理していく。
そんな考え方です。
ただし「苗木を多く植える=品質が上がる」ではありません
ここは、今回私も改めて調べてみて、きちんと分けて考えた方がいいと思ったところです。
樹を比較的小さく仕立てて、栽植本数を増やす方法があります。
でも、
樹の本数が多い
=
ぶどうの品質が高い
とは言えません。
一文字型やH型などの短梢せん定には、
若い樹の時から棚面を早く埋めやすい。
作業を規則的に行いやすい。
せん定を単純化しやすい。
樹によっては樹勢を揃えやすい。
といったメリットがあります。
実際、シャインマスカットで行われた試験では、短梢せん定のI型・H型は初期の収量が高く、早く成園化しやすい結果が出ています。
さらに主要な管理作業の時間も、X型長梢せん定より約20%短縮されました。
でも、
果房重、果粒重、糖度などの果実品質には、仕立て方による大きな差が確認されませんでした。
つまり、仕立て方は大事。
でも、仕立て方だけで美味しさが決まるわけではないということです。
じゃあ「量を取るか、質を取るか」という栽培はある?
ここも気になったので調べてみました。
結論からいうと、
あります。
ただし、
「収量を半分にすれば、必ず味が2倍になる」
というような単純な話ではありません。
ぶどうには、品種ごとに適正な着果量があります。
一つの樹に、たくさん房をならせすぎる。
一つ一つの房を大きくしすぎる。
すると、葉が作った糖などを多くの果実で分け合うことになります。
その結果、品種によっては、
糖度が上がりにくい。
色がつきにくい。
成熟が遅れる。
といった問題が起こります。
実際に、房を付けすぎると品質が落ちる例もある
例えば「安芸クイーン」という赤系の大粒ぶどう。
栽培試験では、着房数を多くすると、
着色や糖度へ悪影響が出る
ことが確認されています。
そのため、目安として、
1房 約500g
主枝1m当たり6房まで
という着果管理が示されています。
「巨峰」の試験でも、果房が400gを超えて大きくなると、果皮色や糖度が低くなる傾向が確認されています。
つまり、
たくさんならせることが、
必ずしも一番いいわけではない。
ということです。
だから農家は、せっかく付いた実を落とす
果物づくりを知らない方からすると、少し不思議かもしれません。
せっかく実が付いたなら、全部育てた方がたくさん売れる。
そう思いますよね。
でも、実際の果樹栽培では逆の作業をします。
房を減らす。
粒を減らす。
枝を減らす。
せっかく付いたものを、人の手で落としていきます。
「いっぱい付ける」より、
「残したものを、どう仕上げるか」。
そこに農家の考え方があります。
もちろん、減らせば減らすほどいいわけではありません。
実を減らしすぎれば、今度は樹の生長とのバランスが崩れることがあります。
大事なのは、その品種、その樹、その畑に合った適正量です。
ぶどうの「質」は、棚だけでは決まらない
こうして調べていくと、美味しいぶどうを作るために見る場所はたくさんあります。
どんな仕立て方をしているのか。
どのくらい房を残しているのか。
一房を何粒くらいにしているのか。
枝が混みすぎていないか。
棚の中へ光が入っているか。
葉をどのくらい残しているのか。
水分をどう管理しているのか。
いつ収穫するのか。
そういったものが全部つながって、最後の一房になります。
美味しいぶどうの理由は、
実だけを見ても分からない。
畑や棚を見ると、その農家さんが何を考えて作っているのか、少し見えてくることがあります。
やっぱり農家は、違うところを見てしまう(笑)
普通にぶどうを買いに来たのに、
まずぶどうを見る。
……ではなく、
棚を見る(笑)
枝を見る。
樹の間隔を見る。
葉っぱを見る。
「どういう作り方してるんだろう?」
って考える。
これはもう、職業病みたいなものですね(笑)
いちかからしたら、
「パパ、そんなのいいから
早くぶどう買おうよ!」
という感じだったかもしれません(笑)
そして、肝心のぶどうは……
そんな棚を見て、
「ここにしてみよう!」
と入ったぶどう園。
結果は、
大正解♪
ぶどう、美味しかったです。
もちろん、棚を見ただけで味が分かったわけではありません(笑)
でも、美味しい農作物を食べたあとで畑を見ると、
「こういうところまで考えて作ってるんだな」
と感じます。
これは、自分がいちごを作っているからこそ、余計に感じるのかもしれません。
お客様が目にするのは最後のぶどう一房。
でも、その裏には何年もかけて作った樹。
せん定。
新梢管理。
房づくり。
摘粒。
着果量の調整。
いろいろな仕事があります。
これって、いちごも同じなんですよね
ぶどう農家さんの畑を見ながら、いちごも同じだなと思いました。
出来上がったいちごだけを見れば、赤いいちごです。
でも、その前には、
苗をどう作るのか。
いつ花芽分化させるのか。
いつ定植するのか。
1株にどれだけ実をならせるのか。
葉をどう管理するのか。
水をどう与えるのか。
温度をどう管理するのか。
いろいろな判断があります。
農作物の味って、
収穫する直前だけで
決まっているわけじゃない。
何か月も前、場合によっては何年も前からの管理が、最後の商品につながっています。
だから他の農家さんの畑を見ると、面白いんですよね。
量か質か、ではなく「どこでバランスを取るか」
今回、ぶどうについて調べてみて、特に面白かったのがここです。
よく、
「量を取るか、質を取るか」
と言います。
でも農業の場合、完全にどちらか一方というより、
どこに「適正なバランス」があるか
を探す仕事なんだと思います。
実を付けすぎれば、品質が落ちることがある。
だからといって減らしすぎれば、収量が取れないだけではなく、樹の生育とのバランスが悪くなることもある。
目指す品質。
目指す収量。
樹勢。
品種。
その年の天候。
販売方法。
そういったものを考えながら、
「今年はどのくらい残すか」
「この房をどこまで大きくするか」
を決める。
同じぶどうでも、作る人によって考え方が違うのも納得です。
ちなみに、その頃の嫁さんとことはは……
ということで、私といちかは美味しいぶどうを買って帰宅。
私としては、ぶどうも食べられたし、棚も見られたし大満足です(笑)
いちかも、美味しいぶどうを食べられて満足。
では、その頃、嫁さんとことはは何をしていたのか。
というと……。
ファッションセンターへ
行っていました(笑)
ぶどうを見る組。
服を見る組。
見事に、行きたい場所が二つに分かれた高橋家です(笑)
たまには別行動もありですね
全員で同じ場所へ行くのも楽しい。
でも、みんなが無理やり同じところへ行く必要もありません。
私は、ぶどう農家さんの畑を見られて満足。
いちかは、美味しいぶどうを食べられて満足。
嫁さんとことはも、買い物ができて満足。
結果、全員満足(笑)
たまには、こういう別行動もありですね。
それにしても、
ぶどうを買いに行ったのに、ぶどうより先に棚を見てしまう。
やっぱり農家をしていると、こういうところが気になってしまいます(笑)
PS:
今回、ぶどうの仕立て方を改めて調べてみると、思っていた以上にいろいろな方法がありました。
一文字。
H型。
X型。
短梢せん定。
長梢せん定。
そして、それぞれにメリットとデメリットがあります。
なので、次にぶどう園へ行った時は、
ぶどうを見る。
棚を見る。
枝を見る。
たぶん前より長居すると思います(笑)
いちかからしたら、
「早く買おうよ!」でしょうけどね(笑)