ズレない人になるより「自分のズレ方」を知る。棚の修繕から考えた自己理解と仕事の仕組み化

棚の修繕をしながら考えたこと

ズレない人になるより
「自分のズレ方」を知る。
自己理解と仕事の仕組み化

「ミスしないようにしよう」ではなく、
「自分はどうズレやすい?」を知る。

そこから、仕事のやり方を変えてみます。

この記事の要点

同じ基準に合わせても、人によって少し短くなる、長くなるなど「ズレ方」に違いがあります。
仕事では「絶対にズレない人」を目指すだけでなく、自分がどちらに、どの程度ズレやすいのかを知ることも重要です。
心理学では、自分の思考や行動の特徴を把握し、観察し、必要に応じて調整する働きを「メタ認知」として研究しています。
忘れるならメモを使う。予定を忘れるならその場でカレンダーへ入れる。弱点そのものを消すより、弱点があっても困らない仕組みを作る方法があります。

まずは4コマでどうぞ(笑)

ひも通りにやったはずなのに、
固定すると少しズレるんですよね(笑)

棚の修繕作業で自分のズレ方を理解して作業する様子を描いた4コマ漫画

「自分がどのくらいズレるのかを理解してみて」

「ひもを目安にするけど、自分がどのくらいズレるのかを理解して、その分ずらして進めてみて。」

と、クルーに伝えました。

何のことかというと、棚の修繕作業です。

苺の花ことばでは、棚の高さをきれいに揃えるために、まず基準になるひもをピーンと張ります。

写真でいうと、このピンク色に見えているひもです。

棚の高さを揃えるために張ったピンク色の基準ひも
基準のひもに合わせて棚の高さを揃える修繕作業

このひもの高さを基準にして、棚の不織布やビニールを固定していきます。

そうすると、端から端まで同じ高さに揃えられます。

ところが「ひも通り」にやってもズレる

基準になるひもがある。

だから、そこへピッタリ合わせれば終わり。

……と思いますよね。

ところが実際には、

ひもへ合わせて、

「よし!」

と思って固定してみると、少しズレます。

合わせた時はピッタリ。
でも固定すると、少し違う。

そして面白いのが、そのズレ方です。

みんな同じ方向へズレるわけではありません。

毎回少し短くなる人。

逆に少し長くなる人。

引っ張る力。

押さえる場所。

手の角度。

固定する瞬間の動かし方。

細かな違いが積み重なって、その人の癖として結果へ出るんだと思います。

だったら「ズレないようにしよう」だけでいいのか?

もちろん、最初に考えるのは、

「なるべくズレないようにしよう。」

です。

これは間違っていません。

でも、何度やっても似た方向へ少しズレるなら、別の考え方もできます。

例えば、毎回少し短くなる。

だったら、

最初から少し長めに合わせておく。

固定した時に少し短くなって、結果として基準へ合う。

逆に、毎回少し長くなるなら、最初から少し短くする。

すると、最終的な結果がちょうど良くなります。

つまり、

「ズレをなくす」だけではなく、
「ズレを予測して補正する」。

という考え方です。

これって「自分を理解する」ってことなんじゃないか?

作業をしながら、これって仕事だけじゃなく、いろいろなことに当てはまるなと思いました。

よく、

「自分を理解することが大切。」

と言います。

でも、

「自分を理解する」

って、具体的に何なんでしょう?

性格診断をして、

「私は○○タイプです。」

と知ることも、一つかもしれません。

でも仕事で役に立つ自己理解は、もう少し具体的だと思います。

自分は、どんな状況になると、
どういう行動を取りやすいのか。

ここまで分かって初めて、仕事のやり方を変えられます。

心理学には「メタ認知」という考え方がある

今回いろいろ調べてみると、かなり近い考え方がありました。

それが、

メタ認知

です。

簡単にいうと、

自分の考え方や行動を、もう一人の自分が少し外側から見ているような働きです。

研究では、メタ認知には大きく、

自分が何を知っているか。

何を苦手としているか。

どの方法が自分に合っているか。

今うまくいっているか。

やり方を変える必要があるか。

といった「監視」と「調整」が含まれます。

知る

やってみる

自分の状態を見る

必要なら方法を変える

今回の棚の作業と、かなり似ています。

「私はこういう人」より「私はこうなる時がある」

ここで、自己理解について一つ気をつけたいことがあります。

それは、

「私は忘れっぽい人間だ。」

「私は仕事が遅い。」

「私はミスが多い。」

と、自分自身へラベルを貼って終わらないことです。

それだけだと、

「自分はこういう人間だから仕方ない。」

になってしまいます。

それより、

どんな時に?
何をすると?
どちらに?
どれくらい?

まで見た方が、仕事には使えます。

例えば、

「私は忘れっぽい。」

ではなく、

「人と話しながら口頭で頼まれた仕事を、あとで入力しようとすると忘れやすい。」

ここまで分かれば対策ができます。

だから私は、自己理解って、

性格を決めることではなく、
自分の「再現しやすいパターン」を知ること。

なんじゃないかなと思います。

「物忘れしやすい」なら、記憶力を鍛える?

例えば、物忘れしやすい人がいたとします。

そこで、

「よし、記憶力を良くしよう!」

と考えることもできます。

もちろん、それで記憶力が上がれば素晴らしいです。

でも、簡単にできるなら、そもそもそんなに忘れてないですよね(笑)

だったら、

「私は忘れる可能性がある」
という前提で仕事を作る。

という方法があります。

頼まれたら、その場でメモする。

予定が決まったら、その場でカレンダーに入れる。

やることが出たら、頭の中に置いておかずタスクへ入れる。

「覚えておこう。」

を減らします。

頭の外へ出すことにも、ちゃんと名前がある

こうやって、覚えておく仕事の一部を、

メモ。

カレンダー。

ToDoリスト。

通知。

などへ任せることを、研究では、

認知的オフローディング

と呼びます。

簡単にいえば、

頭の中だけで処理しようとせず、外部の道具を使って負担を減らすことです。

未来にやるべきことを忘れないために、リマインダーやメモを使うことは、実験研究でも記憶の成功率を高めることが確認されています。

つまり、

「忘れない人になる」
だけが正解ではない。

「忘れても仕事が抜けない仕組み」
を作る方法もある。

ということです。

仕事では「弱点を克服する」だけが成長じゃない

仕事をしていると、苦手なことを直そうとします。

忘れる。

急ぎすぎる。

確認を飛ばす。

時間を短く見積もる。

細かいところへ時間をかけすぎる。

人によって、いろいろあります。

もちろん、直せるところは直した方がいい。

でも、全部の癖を完全になくそうとする必要はないと思っています。

自分がそうなりやすいと分かったなら、

忘れやすい
→ その場でメモ・カレンダーへ入れる
確認を忘れやすい
→ チェックリストを使う
仕事時間を短く見積もりやすい
→ 過去の実績時間を見る
急ぐとミスしやすい
→ 最後の確認時間を予定に先に入れる
同じ方向へズレやすい
→ 最初からその分を補正する

という方法があります。

私はこっちの考え方も、かなり大事だと思っています。

ただし「何となく自分はこう」ではダメ

ここでもう一つ重要なのが、

本当に自分はそうなのか?

です。

「自分は毎回短くなる気がする。」

だけでは、まだ分かりません。

3回。

5回。

10回。

実際の結果を見てみる。

すると、

本当に毎回5mmくらい短いのか。

実は半分は長くなっているのか。

特定の作業だけでズレるのか。

が見えてきます。

自己理解は、
自己イメージだけで作らない。

結果を見る。

記録を見る。

周りからのフィードバックも見る。

その方が、自分を正確に理解できます。

実は「自分が見る自分」と「周りが見る自分」は完全には一致しない

仕事の研究でも、面白い結果があります。

リーダーが自分自身を評価した結果と、部下や同僚など周囲が評価した結果を比較する研究です。

2018年のメタ分析では、自分自身によるリーダーシップ評価と、周囲からの評価には関連があるものの、完全に一致するわけではなく、全体として相関は中程度でした。

つまり、

自分のことだから、
自分が一番正確に分かっている。

とも限らないわけです。

だから仕事で自己理解を深めるなら、

自分の感覚。

実際の結果。

一緒に働く人からのフィードバック。

この3つを照らし合わせるのが良さそうです。

そして「ズレ」には2種類ある

今回の棚作業でも、ここは大事です。

毎回少し短くなる。

これは、一定方向への偏りです。

こういう場合は、最初から少し長くしておけば補正できます。

でも、

今回は10mm短い。

次は15mm長い。

次はほぼピッタリ。

というように、毎回バラバラなら話は別です。

一定方向への「癖」なら補正できる。

毎回バラバラな「ばらつき」なら、
作業そのものを見直す。

という考え方になります。

ばらつきが大きいなら、

固定位置を決める治具を作る。

測る場所を統一する。

手順を統一する。

二人でやっていたものを一人で固定する。

など、作業の仕組みそのものを変えた方がいいかもしれません。

何でも「人の癖」で片づけない。

ここも大切です。

「気をつけます」だけでは、同じことが起きやすい

仕事でミスをすると、

「次から気をつけます。」

と言うことがあります。

私も言います(笑)

でも、

「気をつける」

だけでは、次に忙しくなった時、また元の癖が出るかもしれません。

そこで使えるのが、

「この状況になったら、こうする。」

と先に決めておく方法です。

心理学では、これに近いものを実行意図と呼びます。

例えば、

予定を聞いたら

その場でカレンダーへ入れる

とか、

棚を固定する前に

自分の補正分を確認する

という形です。

94の研究をまとめたメタ分析では、こうした「もし○○なら△△する」という具体的な計画は、目標を実際の行動へ移すのに有効であることが示されています。

単に、

「忘れないようにしよう。」

「ズレないようにしよう。」

より具体的です。

仕事ができる人=弱点がない人、ではないのかもしれない

仕事ができる人というと、

忘れない。

ミスしない。

判断が速い。

何でも覚えている。

そんな人を想像します。

もちろん、能力が高いことは強みです。

でも、それだけではないと思います。

自分は何を忘れやすいか。

何を間違えやすいか。

どんな時に焦るか。

どんな仕事だと時間がかかるか。

自分の傾向を理解していて、

自分がミスする前提で、
先に仕組みを置いている。

そういう人も、仕事が安定していると思います。

管理する側が「全員同じ」を求めすぎないことも大事

今回の棚作業では、人によってズレ方が違いました。

だったら管理する側としても、

「全員、まったく同じ動きをしなさい。」

だけではなく、

「自分はどうなりやすい?」

を本人に考えてもらう。

これも大事なんじゃないかなと思います。

人によって、

手の大きさも違う。

力の入れ方も違う。

得意不得意も違う。

経験も違う。

だったら、結果を揃えるために、途中の調整方法まで全員まったく同じでなくてもいい。

目的は、
「全員が同じ人になること」ではない。

目的は、
「結果をきちんと揃えること」。

ですよね。

自己理解が深い人ほど「自分に任せない」

これは少し逆説的なんですが、

自分を理解している人ほど、何でも自分の能力だけでやろうとしないのかもしれません。

忘れると分かっているから、記録する。

焦ると確認を飛ばすと分かっているから、チェックリストを置く。

時間を短く見積もると分かっているから、過去の実績を見る。

毎回短くなると分かっているから、最初に補正する。

自分を信用していないのではなく、
自分を理解しているから
仕組みを使う。

私は、この違いは大きいと思います。

自分を理解するために見る5つのこと

今回の棚作業から考えると、仕事で自分を理解する時には、こんな順番で見ると分かりやすいかもしれません。

① 何が起きた?
感覚ではなく、実際の結果を見る。
② どちらへズレた?
短くなる、長くなる、遅れる、忘れるなど、方向を見る。
③ どれくらいズレる?
毎回ほぼ同じなのか、ばらつくのかを見る。
④ どんな時に起きる?
急いでいる時、人と話している時、午後など条件を見る。
⑤ どうすれば結果を安定させられる?
自分を変えるのか、最初から補正するのか、仕組みを変えるのかを考える。

ここまで分かれば、

「私はこういう人です。」

で終わりません。

次の仕事へつなげられます。

そして、棚の修繕は無事終了

そんな話をしながら、みんなで作業を進めました。

自分のズレ方を見る。

必要なら少し補正する。

また結果を見る。

少しずつ調整していきます。

そして、棚の修繕も無事終了。

高さがきれいに揃った修繕後のいちごの高設棚
きれいに揃いました♪

こういうのを見ると、やっぱりピシッと揃っている方が気持ちいいです(笑)

「自分を変える」の前に「自分を知る」

今回の作業をしながら、改めて思いました。

仕事でうまくいかないことがあると、

「もっとちゃんとしよう。」

「次は気をつけよう。」

「自分を変えよう。」

となりがちです。

でも、その前に、

「自分は、どうズレる?」

と考えてみる。

もし毎回同じ方向へズレるなら、先回りして補正する。

忘れるなら記録する。

確認を飛ばすなら、仕組みに入れる。

時間を読み違えるなら、実績を見る。

自分の弱点を全部消す必要はありません。

弱点があっても結果が安定する仕事のやり方を作ればいい。

それも一つの成長なんじゃないかなと思います。

最後に:

「ズレないようにしてください。」

だけなら、簡単です。

でも実際の仕事では、人にはそれぞれ癖があります。

だから、

「自分はどっちへズレる?」

「どれくらいズレる?」

「どうすれば最後に合う?」

まで考える。

私は、こっちの方が現実的だと思っています。

自分のことを理解するって、

「私はこういう人間だ。」

と決めることではなく、

「私はこうなりやすいから、こうしておこう。」

まで分かることなのかもしれません。

ということで、棚もピシッと揃ったので気持ちよく次の作業へ進みます(笑)

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