手を速くする前に「歩く・探す・待つ」を減らす。いちご収穫から考える作業効率と経営改善

昔の経営勉強会で聞いた、今でも残っている言葉

手を速くする前に
「歩く・探す・待つ」を減らす。
いちご収穫から考える作業効率と経営改善

一生懸命、速く動く。
それも大事。

でもその前に、
「そもそも、この動き必要?」と考えてみます。

この記事の要点

仕事の時間には、成果へ直接つながる時間と、その仕事を成立させるために必要な時間があります。
作業効率を上げる時、「もっと速く動く」より先に、探す・歩く・待つ・取りに戻る時間を減らせないかを考えます。
ただし、成果へ直接つながらない仕事が全部ムダというわけではありません。必要な準備や移動は残しながら、最小化するのがポイントです。
経営で見ると、こうした数分の改善が毎日・全員分積み重なることで、大きな労働時間とコストの差になります。

まずは4コマでどうぞ(笑)

昔聞いた「作業時間と予備作業時間」。
これを知ってから、仕事を見る場所が少し変わりました。

いちごの収穫を例に作業時間と予備作業時間の違いを説明する4コマ漫画

「作業時間と予備作業時間の違いってわかりますか?」

「作業時間と予備作業時間の違いってわかりますか?」

昔参加した経営の勉強会で、そんな質問をされたことを、ふと思い出しました。

何のことかというと、仕事の中には、

成果へ直接つながる仕事

と

成果へ直接はつながらない仕事

がある、という話です。

当時の私は、

「仕事してる時間は、全部仕事でしょ?」

くらいの感覚だったと思います。

でも、具体例を聞いた瞬間、

「なるほど!」

となりました。

例えば、いちごの収穫

いちごの収穫を考えてみます。

赤くなったいちごを見つける。

手を伸ばす。

摘む。

そして、収穫トレーへ入れる。

この中で、実際にいちごを摘んでトレーへ入れる時間。

これは分かりやすいですよね。

トレーの中のいちごが増える時間。

成果へ直接つながっています。

1個摘めば、収穫量が1個増える。

10個摘めば、10個増える。

分かりやすい仕事です。

でも、収穫中ずっと摘んでいるわけではない

では、収穫している1時間の間、ずっといちごを摘み続けているのか。

もちろん、そんなことはありません。

「次の赤いいちご、どこかな?」

と探す。

次の株まで歩く。

いっぱいになった収穫トレーを交換しに行く。

空のトレーを持って戻ってくる。

人とすれ違って少し待つ。

必要な道具を取りに戻る。

そういう時間もあります。

どれも必要。
でも、その瞬間だけでは
トレーのいちごは増えていない。

これを聞いた時、

「そんなふうに仕事を見るのか!」

と結構びっくりしました。

でも、言われてみると、

「確かに……。」

って、すごく腹に落ちたんですよね。

もう少し正確に分けると「3種類」ある

その後、仕事の改善について調べていくと、似た考え方が「リーン」と呼ばれる経営・生産改善の世界にもあります。

そこで仕事は、大きく3つに分けて考えられます。

① 価値を生む仕事

お客様が欲しい商品やサービスそのものを作る仕事。収穫なら、いちごを摘んで商品になる状態へ近づける時間。

② 必要だけど、価値を直接生まない仕事

今の仕組みでは必要な準備や移動。例えば、いっぱいになったトレーを交換することなど。

③ なくせるムダ

道具の置き場所が分からず探す、資材を忘れて何度も取りに戻る、準備不足で待つ、やり直す、といった時間。

ここが結構大事です。

成果へ直接つながっていないからといって、

全部なくしていいわけではありません。

トレー交換をなくしたら、いちごを運べません(笑)

必要な移動だってあります。

だから、

なくせるものはなくす。

必要なものは、できるだけ短くする。

そうやって考えます。

作業効率=「手を速く動かす」ではない

「作業効率を上げよう!」

と言われると、どうしても、

もっと速く摘む。

もっと速く歩く。

手を速く動かす。

10分の仕事を8分にする。

という方向へ考えがちです。

もちろん、それも改善です。

でも、人間が動く速さには限界があります。

しかも、速さばかり求めると、

疲れる。

ミスが増える。

雑になる。

長時間続かない。

ということもあります。

だったら、その前に、

人を速くする前に、
仕事を短くできないか?

と考える。

私は、こっちの方が好きです。

例えば「1時間の収穫」を分解してみる

分かりやすく、仮の数字で考えてみます。

収穫に60分かかったとします。

いちごを摘む 35分
歩く 10分
探す 7分
トレー交換 5分
待ち・その他 3分

この場合、実際に摘んでいるのは35分。

残り25分は、それ以外です。

ここで、

「摘む手を10%速くしよう!」

と頑張ったとします。

35分の10%なので、短縮できるのは約3分半。

もちろん、それでも立派な改善です。

でも、残り25分の方を見て、

歩く時間を5分減らす。

探す時間を3分減らす。

トレー交換を2分減らす。

とできれば、

合計10分短縮。

手を速く動かさなくても、全体は大きく変わります。

ここが面白いところです。

「もっと頑張れ」ではなく「頑張らなくても速い仕組み」にする

これって、経営をする上では結構大事だと思っています。

例えば仕事が遅い時に、

「もっと速くやって。」

「もっと頑張って。」

と言う。

一番簡単です。

でも、それだけだと、人に負荷をかけているだけかもしれません。

それより、

「なんで歩いてる?」

「なんで探してる?」

「なんで待ってる?」

「なんで取りに戻った?」

を見てみる。

人の能力ではなく、
仕事の作り方に問題はないか?

と考えるわけです。

同じ人でも、環境を変えれば速くなることがあります。

しかも、疲れにくくなる。

こちらの方が、長く続けられる改善ですよね。

リーンでは「歩く・探す・待つ」も改善対象

リーンの考え方では、仕事の中にある代表的なムダをいくつかの種類へ分けています。

今回の話に特に近いのは、

動作
必要以上に歩く、手を伸ばす、道具を探す。
運搬
材料や商品を必要以上に何度も動かす。
待ち
人、機械、資材、前工程などを待って仕事が止まる。
手直し
間違いや品質不良によって、同じ仕事をもう一度行う。

こうして名前をつけると、現場を見る時に気づきやすくなります。

ただ、

「歩いている=悪い」

ではありません。

必要な移動はあります。

問題は、

本当にその距離を
歩く必要があるのか?

ということです。

例えば、道具の置き場所を変えるだけでもいい

改善というと、大きな設備投資を考えがちです。

新しい機械を入れる。

自動化する。

高価なシステムを導入する。

もちろん、それで大きく変わることもあります。

でも、小さな改善でも効果はあります。

例えば、

使う道具を、作業する場所のすぐ近くへ置く。
空の収穫トレーを、途中で取りに戻らなくていい場所へ配置する。
作業開始前に、その日に必要な資材をまとめて用意しておく。
人同士が何度もすれ違わないように、進む方向や順番を決める。
よく使う物の置き場所を固定して、「どこだっけ?」をなくす。

一つだけなら数秒。

でも、それを毎日何十回も繰り返します。

年間で考えると、結構大きいです。

たった10分でも、経営で見ると大きい

例えば、1人あたり1日10分だけ「探す・歩く・待つ」を減らせたとします。

仮に6人。

年間200日、その仕事があるとすると、

10分 × 6人 × 200日

=

年間200時間

です。

1日たった10分です。

でも、年間では200時間。

200時間あれば、別の仕事がかなりできます。

新しい商品を考える。

ハウスを整える。

お客様へ連絡する。

早く帰る。

休む。

使い道はいろいろです。

小さなムダは、
毎日繰り返すから大きくなる。

経営で見ると、ここが重要なんですよね。

まず「何に時間を使っているか」を見えるようにする

改善しようと思っても、何に時間がかかっているか分からなければ直せません。

なので最初は、作業を見ます。

例えば収穫なら、

摘んでいる。

歩いている。

探している。

トレーを交換している。

待っている。

それぞれに何分使っているのか。

細かく見る。

改善の最初は、
速くすることではなく、
今を知ること。

です。

感覚では、

「この仕事、結構速いよ。」

と思っていても、実際に見ると意外と移動が多かったりします。

見る時は「人」ではなく「仕事」を見る

これも、かなり大事だと思っています。

作業を観察すると、

「あの人、歩くの遅いな。」

「もっと速くやってほしいな。」

と、人を見てしまいます。

でも、改善したいのは人ではなく、仕事の流れです。

例えば誰かが何度も資材を取りに戻っていたとします。

その人が悪いとは限りません。

そもそも資材の置き場所が遠いのかもしれない。

補充のルールがないのかもしれない。

最初に必要数が分からないのかもしれない。

「なぜこの人は遅い?」
ではなく、
「なぜこの動きが必要になっている?」

こっちを見る。

その方が、みんなが速くなる改善につながります。

改善する時は、この3つに分けると分かりやすい

私は作業を見る時、こんな感じで考えると分かりやすいと思っています。

① 本当に成果を生んでいる?

商品やサービスを前へ進めている仕事なら、なるべくこの時間を増やす。

② 必要だけど短くできない?

準備、運搬、交換など、なくせないなら距離や回数を減らせないか考える。

③ そもそも、やらなくてよくできない?

探す、やり直す、二重入力、不要な確認などは、仕事そのものをなくせないか考える。

特に3つ目。

これが一番大きいです。

どれだけ速くしても、やらなくていい仕事をやっていたら、その時間は残ります。

最速の作業は、
やらなくていい作業。

です(笑)

改善したら「新しい普通」にする

もう一つ、経営改善で大事なのがここです。

いい方法を見つけた。

一回やってみた。

速かった。

それで終わらせない。

次から、そのやり方を普通にします。

道具の場所を変えたなら、そこを定位置にする。

トレーを置く場所を変えたなら、次回も同じ場所へ置く。

作業順を変えたなら、みんなで共有する。

改善した方法を、
一回の工夫で終わらせない。

そうしないと、数日後には元に戻ります(笑)

改善したものを、新しい標準にする。

そして、またそこから改善する。

この繰り返しです。

経営改善って、売上を増やすことだけじゃない

経営改善と聞くと、

売上を増やす。

新商品を作る。

広告を出す。

価格を上げる。

そんなことを考えます。

もちろん全部大事です。

でも、同じ売上を作るために必要な時間を減らすことも、立派な経営改善です。

例えば、同じ量のいちごを、

100時間かけて収穫するのか。

90時間で収穫できるのか。

売上が同じでも、必要な労働時間は違います。

売上を増やす
だけではなく、
同じ成果を少ない時間で生み出す。

これも利益を作る方法です。

しかも、時間が空けば別の価値を作る仕事へ回せます。

「忙しい」と「成果が出ている」は同じではない

一日中動き回っている。

汗もかいた。

すごく疲れた。

「今日は仕事したな〜。」

という日があります。

でも、経営の目線で見るなら、もう一つ考えたい。

「その時間で、どれだけ成果が増えた?」

です。

歩き回って忙しかった。

でも、必要なものを探していただけ。

何度も同じ場所へ取りに戻っていた。

待ち時間が長かった。

それなら、身体は疲れていても生産性は高くありません。

忙しさではなく、
成果へつながった時間を見る。

これを意識すると、仕事の見え方が変わります。

手を速くする前に、仕事を疑う

昔この話を聞いてから、作業を見る時の考え方が少し変わりました。

以前なら、

「もっと速くできないかな?」

だけでした。

今は、

「これ、やらなくてよくできない?」

「この移動、減らせない?」

「もっと近くに置けない?」

「待たなくていい順番にできない?」

と考えます。

全部なくすことはできません。

必要な準備があります。

必要な移動もあります。

でも、10回歩いていたところが5回になったら、その分だけ摘む時間へ使えます。

5分探していたものが、定位置を決めて10秒で取れるようになれば、その分仕事が進みます。

一生懸命働くことと、効率よく働くこと。

両方大事です。

でも私は、

一生懸命になる前に、もっと楽に成果が出る方法がないかを考えたい。

と思っています。

PS:

こんな感じで、

「探してる時間を減らそう。」

「移動を減らそう。」

なんて偉そうに書きましたが……。

私も普通に、

「あれ?
どこ置いたっけ?」

って探してます(笑)

なので、まずは自分からですね。

探し物をしている自分を見つけたら、

「次からどこへ置けば探さなくて済む?」

を考える。

そうやって、小さな改善を一つずつ積み重ねていこうと思います。

まあ、その置き場所自体を忘れないようにしないとですけどね(笑)

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